ディズニーシーの「ソアリン」がすごかった。
正直なところ、私は乗り気ではなかった。彼女がディズニーデートをしたがっていたから、大学生としての最後の誕生日プレゼントとしてそれを企画したが、そうでもしなければ私はディズニーリゾートに足を踏み入れることはなかったであろう。開園直後にソアリンに向かったものの、その時点で脅威の200分待ちの行列で、正午を過ぎてからようやくソアリンの建物に入ることができた。
ディズニーシーに入園してから3時間、未だにひとつのアトラクションにも乗っていないのである。もちろん、チケット代は安くない。追加の代金を払えば行列をスキップできる特権を購入できるらしいが、彼女はそれを拒否した。私はもううんざりしていたから、多少の不機嫌さを隠すこともしなかった。
もちろん、疲れているのは私だけではない。3時間待たされているのは、周囲の客も同じこと。ぐったりした人々と、溌溂としたキャストとの対比がどうにも可笑しくて、私は少し笑ってしまった。キャストは「感情労働」の真っ最中である。そして、ディズニーリゾートに来ているたくさんの「彼氏」や「父親」たちも、多くがキャストのようなものだろう。ところで、3時間待ってもなお彼女の目は輝いていた。これが演技なのであれば、恐ろしいことである。
よほどすごいものを見せてくれるのだろう。さもなくば、オリエンタルランドをTOBしてやる。こんな気分で、私は安全ベルトを締めた。
そして、私たちを乗せたドリームフライヤーがアルプスの上空を旋回したとき、すでに私は涙を流していた。いや、能動態で語るべきではない。すなわち「涙が流れていた」のであって、まさしく中動態の世界である。脳髄を掴んで揺さぶられるような衝撃を受けて、涙がとめどなく溢れてきた。
翼を広げて旋回すること。
これは、私がずっと思い描いていた体験であった。
私はたいへんに満足して、ソアリンを後にした。泣いていたことは、どうやら彼女にはバレていないようだ。この体験だけで元が取れた。だからこそ、残る時間はすべて彼女のために使える。私は気合を入れた。
今回の旅程。
2泊2日のディズニーデート。宿泊は「1955 東京ベイ by 星野リゾート」。軽井沢や土浦のBEBを利用して以来、星野は私たちのお気に入りである。いずれ「星のや」や「界」にも泊まりたいものだ。星野の術中にまんまとハマっている。
前泊して、ディズニーシー。これがソアリンから始まったことは上記の通り。21時半過ぎにホテルに帰ってきた頃には、まさしく足が棒になっていた。アメニティとして足指セパレーター(足の指を広げてストレッチさせるスポンジ状の器具)が置かれていて、これがたいへん役に立った。星野は、バストイレ別なのも良い。広々とした浴室でゆっくりと湯船につかった。
翌日はディズニーランド。疲れをとるために、起床時間は8時半。ビュッフェスタイルの朝食をいただいて、10時半過ぎにホテルを出発した。なぜだかディズニーランドは比較的すいていて、10分や20分の待ち時間で乗れるアトラクションがたくさんあった。おかげさまで、ディズニーランドを満喫できた。
やはり星野は流石であった。
ディズニーリゾートは、客の「期待」を巧みにコントロールする。
ビッグサンダーマウンテンやスプラッシュマウンテン、タワーオブテラーは、アトラクションの一部が外部からも見える。客は、それを見て「期待」を抱く。その期待があるからこそ、客は長蛇の列にも並ぶ。しかし、ディズニーは客の期待を超える体験を提供する。外部から見えていたのは、アトラクションのほんの一部に過ぎない。だからこそ、客は満足と感激を同時に覚える。
これは、あらゆる仕事に共通する本質だと思う。
価値体験には、必然的にコストが伴う。そのコストは、金銭的であったり時間的であったり、あるいは情緒的であったりする。そのため、コストを負担するに値すると思わせるだけの「期待」を醸成しなければならない。そして、顧客の期待にはきっちりと応えたうえで、それを上回る体験を提供する必要がある。そうすれば顧客は感動する。そして、いつのまにか顧客はファンになる。
もちろん、コンサル業でも同様である。
デートの最後は、ブルーバイユーでのディナー。
ディズニーランドでコース料理をいただく日が来るとは。
このレストランを予約するとき、正直、私は渋っていた。なぜなら、ディズニーの食事はすべて「ぼったくり」だという偏見を持っていたからである。何を食べさせられるか分かったものではない。それに、コース料理とは言え7000円である。
さて、私は感動させられた。まず、前菜のサーモンが素晴らしく、メインのローストビーフへの期待が高まったので、思わず赤ワインを頼んでしまった。このワインがまた素晴らしい。しっかりとしたフルボディなのに、後味はすっきりしていて、苦みやざらつきが残らない。ローストビーフもたいへんに美味しかった。あまり金額を繰り返すのも気が引けるが、これで7000円は安いと感じた。
ディズニーランドの掌上で踊るのも悪くない。
この話にはオチがある。
デートの翌日に私はこの文章を書いているわけだが、いま猛烈にノドが痛い。間違いなく、ディズニーで何らかのウイルスを頂戴してきた。おかげで、いくつかの予定をキャンセルすることになってしまった。明日の朝に病院に行く。おそらく、インフルかコロナのどちらかだろう。
彼女のほうは、何ともないらしい。
ちょっと悔しい。
2026/03/06
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